自律神経失調症

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自律神経失調症Autonomic imbalance

自律神経失調症

自律神経には「交感神経系」と「副交感神経系」の二つの神経が存在します。

全身のほとんどの器官はこの二つの神経系がバランス良く働くことで適正に保たれています。呼吸・血液循環・消化吸収・排泄・生殖・内分泌など、自分の意志ではコントロールできない部分のシステムを調整し、生命維持に必要な体内循環を整えるのが自律神経の役割です。

こうした自律神経がうまく機能しなくなった状態が、自律神経失調症です。自律神経をコントロールする中枢は視床下部という脳の一部です。ここは同時にホルモンの分泌中枢の役目もあるため、急激なストレスを受けて自律神経のバランスが崩れると、成長ホルモンや性ホルモンなどのホルモン分泌にも影響がでてきます。

また反対に、更年期に生じる、急激なホルモンバランスの変化は「のぼせ(ホットフラッシュ)・火照り・冷え・不眠・精神不安」などの自律神経失調症状をもたらすことにもなります。

鍼灸院概要

神経の種類 交感神経 副交感神経
役割 活動中に優位になる神経(別名:動物神経) 安静時に優位になる神経(別名:植物神経)
種類 汗をかく(汗腺をひらく)、内臓の機能を抑える、血管を細くする、心拍数を上げる、血糖値を上げる、腸の動きを抑える 汗を抑える(汗腺を閉める)、内臓の機能を高める、消化吸収力を上げる、血管を広げる、心拍数を下げる、腸の動きを促す

近年の傾向

近年、交感神経の過緊張症ばかりでなく、副交感神経の過緊張症が多くなってきています。その原因は、頭脳活動が増える一方で、重労働や1日の歩行量が減り、身体運動の絶対量が落ちてきていることがあると思われます。また、子どもにおいても、外で思いきり遊ぶ機会が減り、反対に室内でTVを見たり、テレビゲームをしたり、夜まで塾通いをしたりと、身体に対する刺激量が急激に減少しています。

副交感神経の過緊張が起きると、腸の働きが過剰に亢進し、腸自体が細かく痙攣し、下痢をしたり、兎糞便(コロコロした便)になったりする症状が現れることがあります。これが「過敏性腸症候群」と呼ばれる症状です。

また、過緊張状態が長く続くと、副交感神経そのものが疲れ果て、活動そのものが急激に低下します。皮膚・粘膜の分泌異常やバリア機能の低下が起こり、外的刺激に対して非常に敏感になります。それにともない、免疫力も急激に落ち込みます。

副交感神経の活動は30歳を超えると、歳とともに低下していきます。それにより外的刺激に対するバリア機能が落ち、免疫機能低下による疾患が発生しやすくなります。

「顆粒球」と「リンパ球」

新潟大学の安保徹先生は、白血球の一種の「顆粒球」と「リンパ球」のはたらきに着目して、アレルギーの発生原因を説明されています。「顆粒球」は交感神経が活発なときに多く産生され、不必要な細菌などを破壊します。しかし数が多くなり過ぎると、活性酸素を大量に産生してしまい、人体の中の粘膜や細胞組織を破壊し始め、胃潰瘍やガンなどの組織破壊の原因にもなります。 「リンパ球」は異物に対する抗体の種類を記憶することに長け、おたふく風邪やはしかなどの生涯免疫を獲得する役目を果たしています。副交感神経が活発化すると、リンパ球は増加します。
リンパ球が増えることは免疫力が高まることにつながりますが、副交感神経が過剰に亢進してしまうと、リンパ球も過剰になり、外部刺激に対して敏感になりやすくなります。アトピー性皮膚炎に罹っている人のリンパ球数は、健康な人に比べてかなり過剰に多くなっているという報告がなされています。

そのようなことから、アトピー、喘息、アレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患はすべて副交感神経の過緊張状態で起きていると考えられます。ただ、ステロイドの長期使用をしたアトピー性皮膚炎罹患者は、顆粒球が逆転して多くなり、過剰な顆粒球産生により、皮膚の組織破壊が起こっていると言われています。
また、最近耳にする「子どものうつ」は、副交感神経の過緊張状態で起きているのではないかと考えられています。

鍼灸と自律神経

鍼灸やマッサージなどの外的刺激は、過緊張状態に陥った自律神経の働きを和らげれます。さらに、皮膚刺激を通して脳の視床下部にも良い影響を与えて、ホルモン分泌のバランスを整えることにもつながります。
最近の研究では、「気持ちいい」という快刺激が脳内のβエンドルフィンなどの神経ペプチド(※)の分泌を活性化させ、自律神経の機能を正常化させる働きがあることが分かっています。
鍼やお灸の気持ちの良い治療を受けた後、ふぅっと楽になるのは、治療の気持ちよさがβエンドルフィンを活性化させ、自律神経の働きを効果的に和らげるからなのでしょう。
※神経ペプチド:脳内には60種類以上が存在し、自発運動、食運動、体温調節運動、疼痛、睡眠、学習、記憶などその機能は多機能にわたって深く関わっている。βエンドルフィンはその働きから、「脳内麻薬物質」とも呼ばれている。

自律神経失調症は、肩こり・冷え性・不眠症・下痢・便秘・食欲不振やどの場所が悪いかはっきり分からない「不定愁訴」などの症状を一緒に伴っている場合が多くみられます。当院の鍼灸治療では、各患者さんがその時に抱える具体的な症状に合わせて、柔軟に対応・治療していたしております。鍼治療で治癒を期待することは症状によっては難しいですが、週に1回でもコンスタントに通院していただくことによって、数ヶ月後には効果が現れてくるように思われます。
また、より早く、より良好な回復を目指すために、日常生活におけるちょっとした工夫やアドバイスをお伝えすることもあります。愁訴のない、心地の良い暮らしができるようサポートいたします。