気について(気不足)


以前にお話した気・血・水は東洋医学の基礎であり、人体を構成する大切な要素であります。

これから3回にわたり、気・血・水の役割や治療法を書いていきます。


「気」の不足について

 気とは、元気の気、つまり毎日体を動かしていくエネルギーであるといわれています。

現代医学的には、内分泌ホルモンのバランスと自律神経のバランスのことを指しているといわれています。

東洋医学的には、気は体のすべての臓器に存在し、その臓器の代謝生理活動を司っています。ですから気が不足してくると、

体がだるい、人と同じことをしているのに自分だけ疲れてしまう。気力が出てこない、仕事がはかどらないなどの

精神活動の低下を中心とした症状が出てきます。
 
 そのなかで特に重要なのが、腎の気です。腎は親から受け継いだ体の体質を現すといわれ、その人のもっている基本的な強さを現し

ます。いわゆる遺伝的な部分が大きいようですね。昔から気を強くする薬が不老長寿の薬としてもてはやされてきたわけです。

腎の気はすべての体の気の根元となるものですから腎精ともいいます。
 
つまり、先天的に身体が弱い人や老化が進行して腎の気が弱くなると、内分泌ホルモンが弱くなり、いわゆる老化現象が

起こってきます。足腰がだるい、骨が弱い、耳が聞こえにくい、白髪が出てくる、何もないところでつまずいてしまうといったところです。
 

 次に、すい臓(脾)の気は、毎日食べる食べ物から消化吸収されて生じるエネルギーです。

食べたものは、消化吸収されてブドウ糖となり、体に蓄積されたり、エネルギーとして消費されたりするのです。

すい臓の気とはまさしくこうした作用のことをいっていたようです。

当然、すい臓の気が弱ると、食欲不振といった消化器症状が出てきます。

加えて体がだるい、疲れやすい、食事をとると眠くなる、唾液が多いというのもすい臓の気が弱いためです。
 

 肺は空気を交換するところですから気は空気からも得られます。

肺の気が弱くなると、風邪を引きやすい、風邪がなかなか治らない、声が小さいなどの症状が現れます。

この腎・すい臓(脾)・肺が五臓の中で気を司る大切な臓器になります。


そのほかでは、心の気は循環機能を司るため、心気がが弱ると、動悸、息切れ、汗をかきやすいといった症状が現れます。

 肝の気は三焦といって、リンパをうまく流す働きをしているので、肝の気が弱ると、疲れやすい、手足が何となくむくむといった

症状が出現します。
 

 これらをまとめるたものがこちら
気の不足~体のエネルギー不足
1 体がだるい
2 気力がない
3 疲れやすい
4 食後が眠い(すいの気不足)
5 食欲がない(すいの気不足)
6 風邪を引きやすい(肺の気不足)
7 物事に驚きやすい(腎の気不足)
8 声が小さい(肺の気不足)
9 下痢をしやすい(すいの気不足)
10 胃下垂と言われたことがある(すいの気不足)
11 骨が弱い(腎の気不足)
12 舌が大きく、歯形がつく
13 最近年をとったと思う
14 口の中に唾液が多い
 
 
気の不足を補う食べ物

・穀類(アワ・うるち米・もち米・玄米・大麦・トウモロコシ・ハトムギ)
気を補うものは穀類に多いです。主食はうるち米を中心に考えましょう。体が虚弱で冷える人はもち米を加え、
ほてり症の人は大麦を加えます。大麦には血糖を下げる働きがあります。
 
・豆類(みそ・落花生・ソラマメ・えんどう豆)
えんどう豆にはビタミンAが多く含まれ、胃腸を強くするとともに、血糖を下げる働きもあります。
中国では、糖尿病の薬膳には必ず使用しています。ソラマメは胃腸の調子を整え、血糖を下げ、利尿作用があります。

・芋類(ヤマノイモ・ジャガイモ・さつまいも)
ジャガイモ、さつまいもはビタミンCがおおく、胃腸を強くします。ヤマノイモは滋養強壮に昔から有名で、血糖を下げる働きもあります。

・野菜類(カボチャ・にんじん・大根・大豆もやし)
カボチャは緑黄色野菜の代表で、ビタミンA、Cが多い野菜です。また食物繊維も多く含まれ、こんなところが、「冬至にカボチャを食べると病気にならない」といわれるゆえんなのでしょう。にんじんはビタミンAの代表的野菜で、胃腸を強くし、下痢を止めるといわれています。大根は熱をとり、胃腸をスッキリさせるのですが、大根の葉はビタミンA、Cとカルシウムを多く含み、体を温めますのでぜひ利用したいものです。
※食物繊維…食物繊維は体が吸収して利用できないため、かつては不要なものといわれていました。しかし最近では食物繊維は排便を助け、余分なコレステロールを排泄してくれるため、大腸がんの予防に効果的であるといわれています。食物繊維の多いものは、さつまいも、蒟蒻、サトイモなどの芋類、ひじきなどの海藻類、カボチャ、セロリ、ゴボウなどの野菜類、シイタケ、キクラゲなどのキノコ類です。

・果物(栗・桃・さくらんぼ・ナツメ・パイナップル・ぶどう)
栗は腎を強くする果物の代表ですが、焼き栗は消化が悪いので避けてください。ぶどうは性質も平で穏やかであり、病人見舞いの時にもよく利用されていますね。

・魚介類(あじ・ふな・うなぎ・あなご・いか・いわし・えび・こい・すずき・はも)
イカはコレステロールが高いのは気になりますが、ほどほどに食べれば大丈夫です。

・肉類(鶏肉・牛肉・鴨肉)
肉類は、良質なたんぱく質の補強になるのでぜひ取り入れたいものですが、動物性脂肪が気になります。焼き肉やしゃぶしゃぶなど脂を減らすような調理方法で食べてください。

・その他(うずら卵・牛乳・はちみつ)


このような食材で気が作られますが「旬のもの」が一番良いとされます。

「気を遣う」事も大切ですが、疲れた心身は必ず回復しておかないと後で大変な事になるので普段から気を付けて生活しましょう。


参考:元気が出る漢方食  水嶋丈雄