茂木健一郎先生

テレビでおなじみの脳科学者である茂木健一郎先生がこのたび鍼灸の勉強会にてご講義をされました。

お題は『鍼灸師・鍼灸学生のための幸せになる秘訣』。

茂木先生は医師ではありませんが医学全般の知識は当然認知されています。

★病気の治し方2つの概念

●西洋医学はsilver bullet / 銀の弾丸:『特効薬』この病気にはこの薬という考えで科学的根拠(EBM)を重視しています。ハマるものには治ります。

●鍼灸はmagic carpet/魔法のじゅうたん。じゅうたんを健康に見立て宙に浮いた状態にする。わかりやすく言うとトータルに自己治癒能力を高めて治す。

例えば認知症の特効薬は今のところありません。ある研究では50個の生活習慣を改善することで認知症の進行を遅らせたり、改善することができることがわかっています。これがマジックカーペット。

「生体は複雑系」

生体は単一ではなく複雑系であるため特効薬的な治療では全て解決できない。むしろ生体はそんな単純なものではないことがいえます。コロナのワクチンもそうですね。病気になる要因は人によって違います。環境、食事、仕事、学校、遺伝、気候、事件など科学では証明できないバックヤード(物語)があるからです。生命現象は予想ができないのでトータルでアプローチしていかないといけないのです。医師の人間性も治療には大切。「高松先生の顔を見ただけで治った」といわれるように(笑)。なぜ医者に会うだけで治るのか?それは脳の自己治癒力が賦活されることが考えられる。

鍼灸のよいところ:非侵襲性(体が元々もっているもので、自分を整えたり治していく働き)。慢性疾患、メンタルヘルスや健康全般などトータルなものを扱える。

◎幸せとは

幸せってお金?パートナー?子供?志望校や有名大学に進学?など・・・思いますが。科学的な研究では、実は幸せの単一条件はないのです。宝くじで一億円当たったから幸せではないのです。

何が問題なのかというと「幸せのシルバーバレットがある」と幻想をもつこと。不幸せとは「お金がないから幸せでない」、「子供がいないから不幸なんだ」と思い込むこと(focusing illusion)です。科学的な幸福とは、どちらであっても人生全て幸福であることがわかっています。前提条件には健康であり、最低限のお金(生活できる)がある条件以外は何があろうが無かろうが結局幸福度は同じになることがわかっています。

◎幸せになるには

良好な人間関係。人では150人くらいとネットワーク(接触)があること。これはサルでいう毛づくろいにあたる。様々な分野の人と弱いつながりがあること(weak ties)イノベーションにつながり人の関わりが大きくなっていく。活性化することで幸せになる。

感想

昨今の健康観や病気に関して、病院に行って薬だけ追い求めても解決しないのは「生体は複雑系」であることがよくわかりました。科学的根拠(EBM)も大切ですが東洋医学が同じように研究していてもそれを科学的に証明する難しさも本来西洋医学と東洋医学の根本的な考え方が違うからなのでしょうね。昔のように戦争や疫病が流行る時代には特効薬や手術が神のような存在でしたが時代の流れとともに病気や健康観も変わって来ています。そんな中、東洋医学は4000年も変わらぬ医学を続けています。私が幸せを感じるのはそれを生業とし、患者さんがよかったと喜んでいただける時です。皆様に感謝しています。 鍼灸×美容のイノベーションも今から20年前に始まったことですが今では「美容鍼」の認知はすごいものです。僕も時代と共にまた先を見据え、皆様の幸せ前提条件である健康をしっかり守り支えていけるよう今後とも精進して参ります。